ペットと暮らす賃貸の退去費用と原状回復の考え方
退去時の原状回復費用は、どこまでが借主負担なのか。国土交通省のガイドラインをもとに、ペットの傷・臭いが借主負担になりやすい理由、経過年数の考え方、入居時の記録、特約の読み方を整理します。
更新日 · 読了目安 約 6 分 · Pawly 編集部
原状回復は「入居したときの状態に戻す」ことではない
民法は、借主が賃借物を受け取ったあとに生じた損傷について、通常の使用による損耗と経年変化を除き、賃貸借の終了時に原状に復する義務があると定めています。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」も、原状回復を「借主の居住・使用により生じた建物価値の減少のうち、借主の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超える使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義し、借りた当時の状態に戻すものではないと明確にしています。普通に暮らしていても生じる損耗の修繕費は、家賃に含まれる扱いです。退去費用の話は、この線引きから始まります。
借主負担になるもの、ならないもの
ガイドラインは損耗を、借主の住まい方に関係なく生じるものと、住まい方次第で生じたり生じなかったりするものに分けて例示しています。たとえば家具の設置による床やカーペットのへこみ・設置跡は前者で貸主負担、カーペットに飲み物をこぼしたことによるシミやカビは後者で、手入れ不足などで生じた場合は借主負担とされます。借主は物件を善良な管理者として使う義務を負うので、掃除や手入れを怠って汚れが広がった場合も借主の負担になり得ます。ペットと暮らすと、この「住まい方次第」の領域が広がりやすい点を意識しておきましょう。
ペットによる傷・臭いが借主負担になりやすい理由
ガイドラインは「飼育ペットによる柱等のキズ・臭い」を、住まい方次第で生じる損耗の例に挙げています。ペットによって柱やクロスにキズが付いたり臭いが付着したりしている場合は、借主負担と判断される場合が多いと考えられる、としています。背景として、共同住宅でのペット飼育は、しつけや排泄の後始末など飼い主の管理で差が出る問題でもあるという考え方が示されています。また、ペットの飼育が禁止されている物件で飼うと、用法違反にあたるとされています。同じ「ペット可」でも、傷や臭いの程度で必要な工事は変わるため、日頃の対策が退去費用に直結します。
経過年数の考え方は、長く住むほど負担が減る。ただし例外がある
借主に原状回復義務がある損耗でも、費用を全額負担するわけではありません。ガイドラインは設備や内装ごとに耐用年数を定め、耐用年数が過ぎた時点で価値が 1 円になる直線を想定して、年数が経つほど借主の負担割合が下がる考え方を示しています。壁のクロスやカーペットの耐用年数は 6 年です。ただし、部分補修ができるフローリングや、襖紙、障子紙、畳表といった消耗品は、経過年数の考えになじまないとされています。さらに国土交通省の資料は、ペット飼育可の物件で、ペットによるひどいキズや汚れを経過年数を考慮せず借主負担とする特約が設けられる場合があると紹介しています。
入居時の写真とチェックリストで備える
入居前から付いていたキズは借主の原状回復義務の対象外ですが、トラブルの多くは、それが入居時からあったのか、いつ生じたのかがはっきりしないことから起こります。国土交通省は、入居時に物件の状況を確認リストに記録し、客観的な証拠として写真を撮っておくことが有効だとしています。ペットと暮らす場合は、壁、柱、床、建具、ベランダのキズや汚れ、すでに残っている臭いの有無を、全体と近景の両方で撮影しておくと安心です。管理会社から確認リストの提出を求められなくても、自分で記録して共有しておきましょう。入居中に修繕が必要な損傷に気づいたときは、速やかに管理会社へ連絡することも勧められています。
特約の読み方は、有効になる条件と確認したい文言から
契約自由の原則により、借主に特別の負担を課す特約を設けることはできます。ガイドラインは、有効に成立するための要件として、①特約の必要性があり暴利的でないなど客観的・合理的な理由があること、②借主が通常の原状回復義務を超える義務を負うと認識していること、③借主が義務負担の意思表示をしていることを挙げています。契約書では、対象が何か、金額や単価が明記されているか、経過年数を考慮するのかを確認しましょう。東京都内の居住用賃貸の新規契約では、不動産会社が退去時の原状回復の考え方や借主の負担内容(特約の有無や内容)などを書面で説明することになっています。納得できない特約は、説明を求めてから判断してください。
請求に納得できないときの動き方と、Pawly の使い方
退去時の請求に納得できないときは、まず内訳の説明を求め、入居時の記録とガイドラインを照らし合わせます。解決しない場合は、消費者ホットライン(188)や最寄りの消費生活センター、東京都の賃貸ホットラインに相談できます。物件を選ぶ段階では、Pawly の規約透明度スコアが参考になります。退去時の清掃費や原状回復の特約が明示されているほどスコアが上がるため、退去時の条件が見える物件を選びやすくなります。物件詳細の「退去費用シミュレーター」は、想定居住年数を動かして原状回復費・ペット清掃費・ペット特約費の概算を確認できます。家賃をもとにした簡易な目安で、部屋の状態やガイドラインの経過年数の計算は反映していないため、最終的には契約書の記載で判断してください。
よくある質問
出典
この記事の事実関係は、次の一次情報で確認しています。制度や数字は変わることがあるため、手続きの前に最新の公式情報を確認してください。
- 民法(第621条 賃借人の原状回復義務・第622条の2 敷金)(外部サイトが開きます)(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
- 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版・平成23年8月)(外部サイトが開きます)(国土交通省)
- 「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に関する参考資料(令和5年3月)(外部サイトが開きます)(国土交通省)
- 賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版・連帯保証人型)(外部サイトが開きます)(国土交通省)
- 賃貸住宅紛争防止条例(東京における住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例)(外部サイトが開きます)(東京都住宅政策本部)
- 賃貸住宅トラブル防止ガイドライン〜概要〜(外部サイトが開きます)(東京都住宅政策本部)
- 住み始める時から、「いつか出ていく時」に備えておこう!-賃貸住宅の「原状回復」トラブルにご注意-(外部サイトが開きます)(独立行政法人国民生活センター)